5年前に夫を肺がんで亡くしました。
一戸建ての持ち家で一人暮らしをしている68歳のK・Hさん。
息子と娘がおり、実家から離れて所帯を持ち、孫も3人います。
現在、毎朝公園でラジオ体操をし、ウオーキングをしながら仲間と毎日楽しくおしゃべりして暮らしています。
目次
実例に学ぶ「お金とリスク」の対処法
昨年3月、目に違和感を感じ、眼科に行ったところ白内障と診断され、手術することにしました。
現在の白内障の手術は、日帰りで家に帰ることができます。
私は二週間の入院を選んで、片方づつ手術してもらいました。
白内障の手術は、何の苦痛もなく体に負担がないので、むしろ手術した後、はっきりとものを見ることができるので、若返った感じです。
入院費用が保険適用で3万8000円でした。
それに民間の保険会社から60万円ほどの給付金がありましたので、おつりが返ってきたなと思いましたね。
心配しましたが、無用でした。
それでも何かあったらいけないと、終活の本を読んだりしましたが、気が滅入って頭に入りませんでしたよ。(笑)
『後のことを考えるよりは、今やりたいことを優先させた方が元気になれる』(故田部井淳子登山家)と、この言葉を思い出し、割り切って生きることにしました。
ここでは、”おひとりさま”ならではのさまざまな心配事のリスクがあるだろうという中で、次のようなリスクを取り上げました。
リスク1 病気になったら・・・
離婚後、大手術を受けペースメーカー生活になったS・Tさん62歳新潟県在住の場合
6年前に熟年離婚をし、子どもはおりません。
昨年、やっと”おひとりさま”の生活に慣れてきたと思った矢先、「洞不全症候群」と診断され、かなりショックを受けました。
そうこうするうちに、ペースメーカーを入れる手術を、しなければいけないということで入院を余儀なくされました。
入院は11日間。
当時、入院で2万円が給付される医療保険にしか入っておらず、不安で仕方なかったそうですが、「限度額適用認定証」を取り寄せ、支払い時に提示した結果、9万円程度になりました。
さらにペースメーカーを入れたことで医療費還付を受け、かかった費用は実質ゼロとなりました。
S・Tさんは現在、年金受給前の経済的に厳しい時期にいます。
下記はS・Tさんの家計簿です。
収入
年金 0円
学習塾講師 7万5000円
母(82歳)の年金 10万円
合計 17万5000円
支出
食費(日用品含む) 5万5000円
住居費 2万6000円
水道・光熱費 2万8000円
通信費 1万6000円
その他(交際費・雑費) 3万8000円
保険料・医療費 0円
税金・社会医療費 3000円
合計 16万6000円
上記のように、今は母(82歳)の年金を頼って同居しています。
定期的な通院が必要ですが、医療費や薬代は障碍者認定を受けていますので、ほぼかかっていません。
しかし、所得と体調とこれからの自分とを考えたときに、さまざまな不安があります。
アドバイス
まず各自治体の行政指導を受けられることを、お勧めします。
疾患によっては「特定疾患医療費助成制度」を利用できますので、各都道府県窓口に問い合わせ詳細の確認をしてください。
またさまざまな制度がありますので、常に情報網を張り巡らせて置きましょう。
リスク2 介護が必要になったら・・・
要支援1で一人暮らしのT・Kさん82歳大阪府在住の場合
「窓際から淀川が見える、この部屋が気にいってるの」
府内の公団で40年近く暮らしているT・Kさん。
ここに越してきてまもなく夫を亡くしたので、もう長い間一人暮らしです。
子どもはいません。
若いころに会社で経理の仕事をずーっとしていましたので、62歳まで働くことができました。
現在の収入は、年金と株の配当で月8~9万円です。
それで家賃と光熱費を払って、あと足りない分は貯金から引き出して生活費に充てています。
ただ体には不安があり、4年前には膝の人工関節置換手術を受け、杖なしで歩くことが困難な状態です。
要支援1と認定されています。
下記はT・Kさんの家計簿です。
収入
年金 7万8421円
株式の配当 約1万円
合計 約8万8421円
支出
食費(日用品含む) 3万円
住居費 6万2000円
水道光熱費 9000円
通信費 6500円
サプリメント代 4000円
保険料医療費 8000円
税金・社会保険料 3500円
その他交際費・雑費 9400円
合計 13万2400円
※月4~5万は貯金から取り崩しています。
T・Kさんは月4~5万円を取り崩して生活していますが、それでも安心して暮らせる理由は、「りすシステム」(葬儀や納骨など死後の手続きと身元保証や療養看護といった生前の業務を請け負うNPO法人)との生前契約です。
Tさんは10年前、預託金75万円で契約。
いざというときの緊急連絡先にしています。
もう一つ、一人暮らしを支えているのが、ご近所とのつながりだということです。
アドバイス
一人暮らしで、お子さんもいらっしゃらない方は、「りすシステム」のような生前契約を結ぶのも、一つの方法でしょう。
入院の保証人や介護認定の立会などの生前の事務は、必要に応じて依頼します。
財産の管理や看護など多様なメニューがあります。
リスク3 自営業で失業したら・・・
年金5万円の一人暮らしフリーランスK・Yさん72歳京都府在住の場合
60歳から年金を受給する場合、5万円という額に愕然としました、と振り返るK・Tさん。
長年続けた百貨店の仕事は64歳で肩たたきにあい、退職しました。
幸いにも未経験でしたが、薬剤師の資格を持っていましたので、週2日7年間薬局で働いていました。
でも昨年専門的な「調剤」の仕事を命じられ、辛い日々を過ごすようになりました。
錠剤数は間違えるし、パソコンの操作を覚えないといけないし、事故を起こすわけにはいかないので、辞めざるを得ませんでしたね、とおっしゃるK・Tさん。
下記はK・Tさんの家計簿です。
収入
年金 約5万円
個人年金保険 約4万円
合計 約9万円
支出
食費(日用品含む) 約2万円
住居費 4万3000円
水道・光熱費 約1万円
通信費 約1万5000円
その他(交際費・雑費) 約3万2000円
保険料・医療費 約2万円
税金・社会医療費 約1万円
合計 15万円
退職後のK・Tさんは、薬剤師の求人サイトに登録し、再就職を狙っています。
もともとしていた薬局の窓口の仕事に応募するも、年齢が壁になって断られています。
しかし調剤の仕事なら求人がありますので、9月から区の研修を受けて調剤を学びなおし、再挑戦したいと思います。
と意欲を燃やしているそうですよ。
今の年金では足りないので、前を向いて働き場所を見つけます。
もし薬剤師がダメなら、老人施設で調理をしたいと思っています。
リスク4 子どもへの援助がかさんだら・・・
持ち家は息子家族に渡し、賃貸暮らしにかわるY・Tさん61歳東京都在住の場合
12年前に夫を亡くしたYさん。
現在は遺族年金に加え、シルバー人材センターで週2~3日、雑用の仕事をして収入を得ています。
ローンを完済したマンションは、息子家族に明け渡し、自らは賃貸暮らしに移り替わりました。
下記はY・Tさんの家計簿です。
収入
年金 約11万8000円
パート代 約2万円
合計 約13万8000円
支出
食費(日用品含む) 約4万2700円
住居費 6万3600円
水道・光熱費 約1万2500円
通信費 84000円
その他(交際費・雑費) 9000円
保険料・医療費 1万100円
税金・社会医療費 1630円
合計 14万7930円
Yさんは孫への出費が多いので、今の貯金でどこまでできるか、今後の出費も見積もって「孫用の出費ノート」を作り、貯金から取り置きしています。
孫が小さい時に多くあげても、孫は忘れてしまいます。
ランドセルは3万円でもいいのでは。
高校入学などはまとまった金額になりがちなので、多めに取り置きします。
アドバイス
家賃を抑えたいので、都営住宅を検討しているというYさん。
「応募条件や優遇抽選の条件を、よく調べることからはじめましょう」と助言しています。
年金生活の実態は?一人暮らしでも大丈夫 リスクの対処法はコレ!まとめ
60歳から65歳までは収入に空白期間ができます。
その間をいかに過ごすか、今から考えておく必要があるでしょうね。
特にフリーランスの仕事を持っている方は、年金に陰りがありますので、若いうちから対策をねっておく必要があります。
今は元気でも、年齢が増してくると何らかの形で、体の故障がつきものです。
改めるべきことは改め、修正が効くうちに修正し、将来の設計図をシミュレーションしておきましょう。